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4 遺言のトラブルはこんなところに

遺言があるのにトラブル発生、という事態は少なくありません。
どんなときにトラブルになるのかご紹介します。
 

遺言書が2通出てきた →どちらが有効になりますか?

内容が重ならなければそれぞれ有効です。

遺言はいくら書き直しても自由ですので、何通あっても、内容が重ならなければそれぞれ有効です。

ただし、内容が重なる部分は、後の遺言により前の遺言が取消されたことになります。遺言者の気が変わり、遺言を変更するは自由だからです。

この場合、遺言が取消されたことになるのは抵触する部分のみで、一部抵触しているからといって前の遺言全体が無効になるわけではありません。

遺言の作成は、その日付の前後によりますので、1通が自筆証書遺言で、もう1通が公正証書遺言の場合でも、公正証書のほうが特に有効になるといわけではなく、あくまでも遺言書作成日の前後によります。つまり、後から作る遺言がどんな方式でも、法的な要件を満たしていれば、先に作った遺言を取り消すことができるのです。

長男が遺言書を隠していたのですが

故意に遺言書の発見を妨げ、自分の不利を妨ごうとした場合などに、相続人の資格を失う場合があります。

民法では、遺言書を隠したりすると相続人の資格を失う『欠格』という制度があります。

遺言の隠匿に当たるかどうかは、

(1) 故意に遺言書の発見を妨げるような状態にしたかどうか

(2) 遺言の隠匿により相続法上有利となり、または不利になることを妨げる意思があったかどうか

により、判断されますが、その解釈は微妙な問題です。

以下に隠匿に当たらない例とあたる例を紹介します。

隠匿に当たらない例

4人家族(妻、長男、次男)の場合で、亡くなった夫は、生前に『遺産の全てを長男にやる』旨の公正証書遺言を弁護士に依頼していました。

夫は遺言書作成段階に、そのことについて長男に相談をしており、遺言書は亡くなった夫の金庫にあることを長男は知っていました。

しかし、この長男は、遺言書の存在を公表することなく遺産分割協議によって、遺産の全てを単独で相続しました。

しかし、あとになって、次男が長男の行為は遺留分減殺請求権の妨害行為であり、遺言書の隠匿に当たると主張しました。

しかし、裁判所は、公正証書遺言の原本は公証役場にあり、遺言書作成の証人、遺言執行者にも弁護士がなっており、当然遺言の存在は知っていること、また、長男が遺言書の存在を公表しなかったことをもって遺言書の発見を妨げるような行為をしたとはいえないし、長男は遺言どおりの内容を実現しようとしただけで、協議分割によれば、むしろ遺留分以上の法定相続分を主張される可能性があるのだから、特に有利または不利妨害の意思があったとはいえないとし隠匿にはならないとしました。

しかし、遺言書がある場合は、きちんと公表した方がいいのは当然です。

隠匿に当たる例

上記と同じようなケースで、ただ遺言が自筆証書遺言であった場合です。

さらに、今回の場合、長男は裁判所に相続放棄伸長の請求をしてまで、他の相続人に相続放棄させようとしましたが、失敗に終わり、その2年後に相続税納付の件で税務署から呼出しを受け、これをきっかけにようやく遺言書を公表しました。

しかし、他の相続人から裁判を起こされ、一審では隠匿の故意まではなかったとされましたが、控訴審では遺留分減殺を恐れての隠匿に当たると判断され相続人失格となりました。

 

遺言書を隠匿すると最悪の場合『欠格』となり相続人の資格を失うので気をつけましょう。

遺言書の字が読めません

相続人の協議で結論を出して妥協することが多いですが、鑑定をおすすめします。

遺言書の文字が達筆過ぎたり、癖字で判読できない場合は鑑定を受けるのがいいでしょう。実際には、鑑定を出す前に、相続人の協議で結論を出して妥協してしまうケースが多いようですが、これでは遺言の一部不明の影響で、権利者になるべき者が協議に参加しなかったり、逆に無権利者になるべき者が協議に加わったりするおそれがあり、遺言が曲げられる可能性があります。鑑定をしても全く読めない遺言は無効となるしかありません。鑑定は、事案を調停に持ち込み、裁判所の鑑定によるのがいいでしょう。

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