40代での遺言の作成は、早すぎるでしょうか?
確かに、当事務所に遺言のご相談いただくのは60代以上の方が多いです。しかし、40代での遺言は、決して早すぎることはないと思います。実際に、当事務所でも30代、40代の方の遺言作成のサポートもさせていただいております。
40代といえば、まだまだ働き盛り。遺言なんて縁起でもない、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、皆さん、生命保険を考えてみるとどうでしょうか?多くの方が、遺された家族の生活を考えて、20代30代の時から生命保険に加入しています。
万が一のことを考えて今から備えておくことは、特別な事ではないのです。
年齢を重ねた方の死には、家族もそれなりの覚悟ができているかもしれません。しかし、若い家族の死は家族にとって受け入れがたく、精神的にもダメージが大きいものです。そんな中で、遺産を巡ってトラブルになってしまったら、遺された家族は大変な苦痛です。しかし、配慮の行き届いた遺言書を作成しておけば、遺産の分け方で紛争になる心配はなく、円滑な相続が期待できます。遺言書を作成しておくことで、家族を精神的にも金銭的にも支えることができるのです。
「相続人が1人しかいない」、「家族が皆円満で、連絡も密に取っており、もしもの時の財産の分け方も話し合い済み」・・・のように遺言書作成の必要性が少ないという方もいらっしゃるかもしれませんが、逆に遺言書を作成しておくことをお勧めしたいケースもあります。
夫婦に子供がいない場合、相続人は配偶者と親になります。親や祖父母がすでに亡くなっていて、兄弟姉妹がいる場合、配偶者と兄弟姉妹が相続人です。もし、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その兄弟姉妹の子ども(甥や姪)が相続人となります。
民法で定められている法定相続分は以下の通りです。
配偶者と親が相続人の場合
配偶者:3分の2、親:3分の1
配偶者と兄弟姉妹(または甥・姪)が相続人の場合
配偶者:4分の3、兄弟姉妹:4分の1
配偶者は義理の両親や兄弟姉妹と遺産分割協議をすることになりますが、関係が悪かったり、疎遠だった場合は、円滑に話し合いを進めることが難しくなります。
また、財産の大部分が不動産の場合も、分けることが難しいので話し合いの難航が予想されます。
遺言書があれば
遺言は法定相続に優先します。そのため、
夫婦に子どもがいれば、子どもは未成年であっても法定相続人になります。年齢は関係ありません。そして、遺産分割協議には未成年の子どもも含めた法定相続人全員の同意が必要になります。
しかしながら、未成年は自分では法律行為を行うことができず、法定代理人の同意が必要になります。日常的な法律行為は親権者が法定代理人になりますが、相続で親権者と未成年の子が相続人となる場合、親と子どもの利益が相反するため、親が子どもの法定相続人となることができません。
そのため、親の代わりに子どもの代理人となる特別代理人を選任して遺産分割協議を行うことになります。子どもが複数いれば、子どもの数だけ特別代理人を選任する必要があります。
特別代理人は、子どもに不利な内容の遺産分割には承諾できませんので、基本的には法定相続分を確保した内容で話し合いが進められることになります。
遺言書があれば
遺言は法定相続に優先します。そのため、
離婚をした場合、別れた配偶者には相続分はありませんが、子どもは法定相続人になります。
例えば、再婚をして現在の妻との間に子どもがおり、前妻との間にも子どもがいる場合、相続人は「現在の妻」と「現在の妻との子」と「前妻との間の子」となります。前妻との間の子と今の妻子は疎遠であるケースが多く、ほとんど面識のない相手との遺産分割協議は大変な苦労を伴います。話し合いのテーブルにつけなかったり、感情的になってしまったりと、スムーズに進むことの方が珍しいかもしれません。
また、相続税には申告の期限があります。話し合いが長期間滞ると配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例等が適用できなくなり、負担せずに済んだはずの税金を負担することになってしまうこともあります。
遺言書があれば
遺言は法定相続に優先します。そのため、
40代での遺言書作成と80代の方の遺言書作成は気を付けるべきポイントが異なります。どんな点に気を付けたらよいか、確認しましょう。
遺言書を作成する全ての方に言えることですが、遺言書は内容面・形式面で不備の無いように作成しましょう。内容面で言えば、遺留分の考慮の必要性や遺言の実現可否の検討が欠かせません。また、形式面でも、押印の漏れや作成日の記入など細かな点にも気を配る必要があります。
遺留分とは、相続人が最低限の遺産を確保するための制度で、遺言によっても奪うことはできません。配偶者、子(代襲相続人も含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)が遺留分の権利を有しています。兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺言を作成する際は、遺留分を十分に考慮して対策を練っておきましょう。
40代の場合、実際の相続はその後何十年後になるかもしれず、何十年後の事を想像して遺言を作成するのは困難です。40代で作成する遺言は、将来、子供の成長や進学・独立、財産の状況に応じて遺言に残したい内容が変化してくると考え、定期的に見直しをし、必要に応じて書き直しをすることをお勧めします。
見直しタイミングの一例
遺言書は書き直しが可能です。一度作成して終わりではなく、現状に即していなかったり、自身の気持ちに変化があったりした場合は、遺言を作成し直すようにしましょう。
遺言書はご自身でも作成できますが、不備のある遺言書は逆にトラブル引き起こすことになりかねません。心配な場合は、司法書士や弁護士といった専門家に依頼すると安心です。さらに、専門家に遺言執行者の就任を依頼しておけば、確実に遺言を実現してもらえるでしょう。
遺言書作成のサポートを依頼する場合には、遺言書作成の経験が豊富な専門家を選ぶと良いでしょう。また、40代の方の場合、長年に渡って定期的に遺言の見直しをサポートしてもらいたいですし、遺言執行を任せるタイミングが何十年後になるかもしれません。そういった点から、あまりに年齢が上の方に依頼するのは避けたほうが無難でしょう。
「遺言書は何歳くらいで書いたらいいですか?」
そう聞かれることがあります。私は、遺言は、〇歳で書くのが正解、ということはありません。書こうと思ったときに、ぜひ書いてください、とお話ししています。
『遺言を書く』というと、何だか重たい感じを受ける方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際、当事務所でお受けしているのは、将来を悲観して、というよりは、万が一の時に、家族に大変な思いをさせたくない、家族を守りたい、といった前向きな気持ちから作成されるケースがほとんどです。
40歳で遺言を書くのは、決して早すぎることはありません。人生の折り返しを迎える時期に、今までの人生、これからの人生に想いを馳せ、大切な家族のために遺言を作成してみてはいかがでしょうか。
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「遺産相続サポート」「遺言作成補助」等の業務は司法書士法人で、「遺言執行者」や「後見人・保佐人・補助人」に自ら就任する業務は司法書士個人で、それぞれ受託しています。