現代の日本では超高齢化社会が進んでおり、資産の継承や管理がうまくいかないことが、空き家の増加の原因の一つともなっています。そんな中、「家族信託」による資産継承に注目する人が増えてきています。
注目されている理由は大きく2点挙げられます。
従来から、資産管理・資産承継の対策としては「委任」「成年後見(任意後見)」「遺言」の制度が用意されています。しかしながら、これらの制度には負担や制約があり、本人や家族の希望通りに資産管理・資産承継することが難しいという問題がありました。
一方、家族信託では従来からの制度の問題を回避し、本人や家族の希望を実現するための柔軟な設計が行えますので、ご自身の家族に合わせた資産運用・管理が実現できるのです。
例えば、障がいを持つ子供がいる場合。
自分(親)が亡くなった後、残された子供がどのように暮らしていくかを考えて、仕組みを作ることができます。子供の生活をみてくれる人に財産を託し、子供に定期的に財産を引き渡す仕組みを家族信託で作ることで、障がいのある子の安定した生活を保障することが可能となります。
他にも、賃貸物件を所有している場合や事業継承を考える場合にも家族信託は活用できます。資産から生まれる利益の権利は自分が保持したまま、資産の管理・処分の権限のみを誰かに託すことができますので、円滑に資産継承が進められます。
「家族信託」とは、家族に財産を信託して管理・承継してもらう方法で、比較的新しい制度です。ご自身や配偶者の今後の生活のことや認知症のことを心配されて検討される方が、近年増えてきています。
家族信託を活用すれば、将来、判断能力が衰えた時に備えて家族に財産の管理を任せることができますし、死亡した後は、残された家族のために財産をお気持ちに沿った形で使うことができます。また、財産承継先を、次のその先の世代に渡って指定することも可能です。
加えて、家族や自分が信頼している人に委託する仕組みですので、高額な謝礼は必要ありません。「家族信託」は、資産が多い・少ないに関わらず、誰でも利用できる制度と言えます。
家族信託は、子供などの信頼できる人(家族)に受託者になってもらって財産管理を委ねるというのが基本的な仕組みです。
元気なうちは自分の財産は自分で問題なく管理できますね。
それでは、高齢になって、自分で管理することが難しくなったら、どうなるでしょう。今までは、成年後見制度の利用を検討される方が多くいらっしゃいました。
これからは、判断能力の衰えに備え、財産からの利益は得つつ、財産管理を家族に任せることができる家族信託の利用を検討してみましょう。
自分が亡くなった後の円満な相続を考えるとき、遺言を作成される方が多くいらっしゃいました。一方で、事業の承継等を考えると、元気なうちから準備をしておいた方がよいケースも見受けられます。
権限は移さずに財産管理を任せたい、事業に掛かる資産は分散させたくない、といった場合は次の相続、その先の相続までカバーできる家族信託を検討してみましょう。
人はいずれ老いていきます。今は元気だが、認知症などにより判断能力が衰える将来に備えたいと考える方が、家族信託を検討されるケースが多いです。
成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度があり、法定後見制度の場合、親族以外の第三者が選任されることがあり、報酬も発生します。また、判断能力があるうちは、財産の管理を任せることはできません。
判断能力のあるうちから家族に財産管理を任せたい方は、家族信託を検討されると良いでしょう。
親亡き後の障がいのある子の生活を心配されるとき、家族信託を利用し、財産を親族に託して子の安心した生活を計画することができます。
自身に子がいない時、財産は配偶者に相続されます。その後、配偶者が死亡すると配偶者の親族に資産が渡ることになります。家族信託では、配偶者が相続した後はもともと資産を持っていた一族が承継するように設計することができます。
自身の今後の事を考えた時、病気や認知症になった場合を想像して不安を感じる方は多いと思います。その時に備え、身のまわりのことや財産の管理を誰かに任せたいと考えられる方が検討される制度として、成年後見人制度があげられます。
家族信託と成年後見人制度は似ているようで、全く異なる制度です。
成年後見人制度には、2種類あります。
法定後見制度は、後見人を裁判所が選任します。通常、本人が認知症などになった後、親族などが申し立てます。
任意後見をスタートさせるには、認知症などにより本人の判断能力が低下した後、本人や親族が家庭裁判所に後見監督人の選任を申し立てをし、後見監督人が選任される必要があります。たとえば、病気で寝たきりになったとしても、判断能力があるのであれば、任意後見契約はスタートしません。つまり、支援者に後見人となってもらって財産の管理を任せることはできません。
信頼できる人に財産管理を任せられる点は家族信託と同じですが、大きく異なるのは、財産管理を任せられる時期となります。
上述したように、後見制度の場合、支援者に財産管理を任せられるのは、あくまで自分が認知症などになった場合です。
一方、家族信託であれば、判断能力があるうちから自身が信頼する人に財産管理を任せることができます。そして、将来、もし自身が認知症などで判断能力を失った場合でも、希望にかなった方法で財産管理が可能となります。
成年後見制度 | 家族信託 | |
---|---|---|
財産管理者 | ≪法定後見制度≫ ≪任意後見制度≫ | 家族で相談して決めた受託者 |
財産管理を任せられる時期 | 判断能力が衰えてから | 契約で決めた時から (判断能力があってもOK) |
不動産の処分 | ≪法定後見制度≫ ≪任意後見制度≫ | 受託者が信託の範囲内で自由に管理・処分ができる |
身上監護権 | 〇 | × |
ご不明な点がございましたらお気軽にお問合せください。
遺言は、最終の意思表示です。 遺言を作成しておくことにより,相続財産の承継について,被相続人ご自身の意思を反映させることが可能となります。
遺言は遺言者が自由に書き換えることができます。遺言が複数見つかった場合は、新しい遺言が効力を持ちます。そのため、家族間で財産の相続人を決めて遺言書に残したとしても、その後に遺言者が書き直して遺言内容を変更してしまう可能性があります。
遺言の効力が発生するのは、遺言者が死亡した時です。生前の事について遺言に記載したとしてもその内容は有効ではなく、死亡するまでは財産の管理を任せることはできません。
遺言は、「自分が死亡した時に財産を誰に相続してもらうか」を残します。その次の相続については対応できませんので、資産承継(二次相続以降の資産承継)の実現を希望する場合は遺言だけでは不足していると言えます。
遺言は、遺言者の意思表示です。家族に相談せずに作成することもできます。
一方、家族信託は委託者と受託者との契約です。ご自身のみで作成することはできません。家族で相談し契約を結びますので、勝手に変更される恐れは少ないでしょう。死後の事だけでなく、生前の資産管理にも対応できますし、二次相続以降について決めることもできます。
遺言 | 家族信託 | |
---|---|---|
内容を本人が勝手に変更する恐れ | あり | 少ない |
財産管理・処分を任せられる時期 | 遺言者の死後 | 契約で決めた時から (生前からOK) |
二次相続以降の資産承継先の指定 | × | 〇 |
家族に内緒にできる | 〇 | × |
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委任は、法律行為を相手方に依頼し、相手方がそれに承諾することで効力を生じる契約です。例えば、銀行での手続きを「代わりにやっておいて」と子供に頼むのも、委任契約に基づくものとなります。財産の管理を委任する契約を「財産管理委任契約」と言います。
委任は契約です。当事者間の合意のみで自由に内容を決めることができますが、本人に判断能力がある必要があります。認知症などにより、判断能力が低下した後は委任することできません。一方、家族信託は判断能力が低下した後も継続していくことを前提としています。
委任をする場合、財産の所有権は本人に残ったままですが、家族信託の場合は形式上は受託者に所有権が移ります。例えば、父親が子供に銀行口座の手続きや不動産売買を任せたいとします。委任の場合、所有権は父親のままですので、父親が認知症になってしまうと本人確認ができず、銀行での手続きや不動産売買をすることができません。一方で、家族信託の場合は、名義は受託者である子供に変更されますので手続きを進めることができます。
財産管理委任契約 | 家族信託 | |
---|---|---|
本人の判断能力 | 判断能力が必要 | 判断能力が低下した後も継続 |
財産の所有権 | 移動しない | 形式的に受託者に移る |
死亡後の資産承継先の指定 | × | 設定可能 |
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